ちょっと落ち込んだ日。
月を見上げて、なぐさめられるような気持ちになったことはありませんか?
月は、日本人にとって古くから馴染み深いものでした。
満月や三日月、立待月など月齢によって呼び分けたり、太陰暦という暦の基準にしたり。
今でも、いろいろな歌に月が出てきますよね。
そんな月を楽しむ行事、「お月見」。
今回の記事では、
- お月見の起源
- お月見はいつやるのか
- 月見団子やウサギの由来
などについて解説していきます。
ときにはゆっくりと月を眺めて、古代の日本に思いを馳せてみるのも楽しいですよ。
お月見の起源
お月見とは、月を鑑賞しつつ、秋の収穫を祝う行事です。
日本では古代から月を信仰の対象としており、『古事記』『日本書紀』には「ツクヨミノミコト」という月を司る神様も登場します。
現在の「月を鑑賞する」という行事は、中国(唐)の「中秋節」という文化がもとになっています。
平安時代に貴族たちの間に取り入れられ、歌を詠んだりお酒を楽しんだり、雅な遊びとして楽しむようになりました。
やがて庶民の間にも広まると、五穀豊穣を祝う行事へと変化していったのです。
十五夜だけじゃない!3つのお月見
お月見といって思い浮かぶのは、「十五夜の月」でしょう。
しかし、お月見をするのは十五夜だけではないのです。
実は、「十五夜」「十三夜」「十日夜(とおかんや)」の3回あります。
「十五夜」と「十三夜」を合わせて見れば「二夜の月」、さらに「十日夜」も見れば「三月見」と呼ばれます。
それぞれ解説していきます。
十五夜について
十五夜は、旧暦8月15日のことを指します。
秋の収穫を祈願する日で、「中秋の名月」「芋名月」とも言います。
月見団子やススキ、芋などをお供えします。
十三夜について
十三夜は、旧暦9月13日のことを指します。
その年の収穫に感謝をする日で、「後の月」「豆名月」「栗名月」とも言います。
月見団子やススキ、豆や栗などをお供えします。
十五夜と十三夜のどちらか片方しか鑑賞しないことは「片見月」「片月見」と言われ、縁起がよくないとされています。
十日夜について
十日夜(とおかんや)は、旧暦10月10日のことを指します。
収穫を終えて田の神様を見送り、また来年の豊穣を祈願する日です。
「三の月」「刈上げ十日」「かかしあげ」「大根の年取り」とも言います。
主に東日本の風習であり、田の神様の化身とされている「かかし」にお供え物するなど、地域によってさまざまな行事が行われます。
お月見のお供え物とは?
お月見のお供え物について解説していきます。
月見団子
お月見といえば月見団子ですよね。
月見団子は満月に見立てたものであり、作物の収穫に感謝し、豊作を祈願するためにお供えします。
十五夜にちなんで15個供えるのが一般的ですが、1年の満月と同じ数12個(うるう年は13個)、簡略した5個など、地域によって団子の数は様々です。
月がよく見える場所に台を置き、その上にピラミッド状に積み上げてお供えします。
ススキ
お月見は、豊作を祈願する行事です。
本来なら稲穂をお供えしたいところですが、旧暦9月15日はまだ穂が実る前だったので、稲穂に見立てたススキをお供えするようになりました。
またススキは、悪霊や災いから収穫物を守る魔除けの力があると考えられてきました。
お月見でお供えしたススキはすぐに捨てず、魔除けのため庭や水田に立てたり、軒先に吊るしたりする地域もあります。
農作物
お月見は、稲だけではなく、様々な農作物の豊作を祈願する行事です。
そのため、芋や栗、豆、野菜など、収穫されたばかりの農作物もお供えします。
十五夜の別名を「芋名月」と呼ぶように、お月見は芋類の収穫を祈願する行事でもありました。
水・酒
米や水、塩、そしてそれをもとに作られるお酒は、古くから神前に供えるものとされてきました。
お月見の際には、新米から醸造したお酒をお供えします。
月を鑑賞しながら飲むお酒は「月見酒」と呼ばれ、秋にしか味わえない「ひやおろし」が好まれます。
月とウサギの伝説
子供のころ、「月でウサギが餅つきをしている」と聞いたことがありませんか?
なぜそういう風に言われるのか、気になりますよね。
ここでは、月とウサギの伝説に関わる説話などを紹介していきます。
帝釈天とウサギ
月にウサギがいる、という話のもとになったのは、インドの『ジャータカ神話』です。
それが日本の説話集『今昔物語集』に取り入れられ、現在まで伝わっています。
どのような話なのか、簡単に説明しますね。
昔、天竺(インド)でウサギ、キツネ、サルが一緒に暮らしていました。
3匹はある日、貧しく疲れ果てた老人と出会います。
老人のために、3匹は食べ物を探しました。
キツネは墓場に供えられていた団子や魚を、サルは人里で育てられていた野菜や豆を持ってきます。
しかし、ウサギは何も見つけることができません。
そこで「これから美味しいものを取ってくるから、焚き火をして待っていてください」と言って出かけていき、手ぶらで戻ってくると、「私には食べ物を取ってくる力がない。だから、どうぞ私を焼いて食べてください」と火の中へ飛び込んだのです。
実はその老人は、帝釈天という神様でした。
自らを捧げるウサギを見た帝釈天は、月にその姿を映し、慈悲深い行いを他の人々に示して手本としたのだそうです。
見ず知らずの老人のために、自らの身体を捧げたウサギ。
なんとも慈悲深いお話です。
そんな説話があったから、ウサギは月にいると言われているのですね。
ウサギの餅つき
帝釈天とウサギの話には、お餅つきの話は出てきません。
では、いったいどうして「月でウサギが餅つきをしている」と言われるのでしょうか?
どうやら、話の元もとになっているのは古代中国の伝説のようです。
古代中国には、「ウサギが月で杵と臼を使って不老不死の薬を作っている」という伝説がありました。
それが日本に伝わる中で、稲の豊作を祈願することから「不老不死の薬」ではなく「稲=餅」をついているという話に変わっていったのではないかと考えられています。
まとめ
今回は、お月見について解説しました。
- お月見の起源
- お月見はいつやるのか
- 月見団子やウサギの由来
について、詳しく分かりましたね。
お月見の歴史に思いを馳せつつ、ゆっくりとした時間を過ごしていただけると幸いです。